大学図書館は貸出履歴を長期保存していることがある

ネット上で「図書館は利用者のプライバシーを保護するため、本が返却された時点で貸出記録を消去している」という話をしばしば見かける*1。大学図書館では必ずしもそうではない。

大学図書館における個人情報・プライバシー保護という文書では、2005年の私立大学図書館協会西地区部会に加盟する各大学図書館241館を対象とした貸出履歴の扱いについてのアンケート調査の結果が報告されている。資料が返却されても個人の貸出履歴を保有し続けている図書館が87%を占めたという。

"OPAC 貸出履歴"でググると自分の貸出記録を確認する方法を解説したページがいくつも見つかる。ほとんどが大学図書館のものだ。返却後も個人の貸出履歴を保有し続けている大学図書館は今でも多い。

研究や学習のための資料の貸出が主要な目的である大学図書館では、履歴を抹消してプライバシーを厳格に保護するよりも、以前読んだ本を簡単に確認できることのほうが大事だという意見もあるかと思う。確かに借りた本をメモするのは面倒だ。

しかし、上記のアンケートでは、返却後も記録を保持する理由として、利用者からの要望を挙げた回答は17%にすぎず、利用統計を取るためという回答が51%と最も多かった。上記のまとめではオウム事件のときに履歴がすべて残っていたためにプライバシーが保てなくなりました。そのために全国のソフトが履歴を削除するようになったのですと説明されている。はっきりした資料が見つからなかったが、1995年に国会図書館で起きた問題らしい。それから10年後の2005年になっても私立大学図書館ではいまだに貸出履歴が長期にわたって保存されている状態で、貸出履歴を可能な限り保持しないという考え方が根付いていないというのは意外なことだ。 一般的な公共図書館と私立(に限らないかもしれないが)大学図書館ではなぜここまでスタンスが違っていたのか(あるいは現在も違うのか)が気になる。